「願いの光、友の影」

短編小説
この記事は約3分で読めます。





「願いの光、友の影」

Related_Image_{unique_id}

「願いの光、友の影」

冬の終わりが近づいていた頃、田舎の小さな集落に住む少女エリは、不思議な人形と出会った。村の外れにある古びた骨董屋で、埃をかぶった棚の奥に隠れていたその人形は、微笑みを浮かべた可愛らしい顔を持っていたが、その目はどこか遠くを見つめているようだった。エリは心を惹かれ、両親の許可を得て、その人形を購入することにした。

家に帰ると、エリは人形を自分の部屋に飾り、毎晩眠る前には必ず話しかけた。最初はただの無骨な人形に過ぎなかったが、ある晩、エリが「あなたの名前は何?」と尋ねた時、ささやくような声が聞こえた。「私はミナ。あなたの願いを叶えるためにここにいるの。」

エリは驚き、目を丸くした。「願いを?本当に?」その瞬間、薄暗い部屋の中がほんのりとした光に包まれ、ミナは微笑みを深めた。

「でも、願いには責任が伴うわ。何を願うのか、よく考えて。」

エリはしばらく考え込んだ。彼女の小さな願いは、遊び友達が欲しいことだった。集落には同年代の子どもが少なく、孤独を感じることも多かったからだ。「私は、遊んでくれる友達がほしい!」とこっそり願った。

次の日、エリは学校へ行く途中、空を見上げると、何種類もの渡り鳥が群れを成して飛んでいるのを見つけた。その瞬間、エリは思いついた。「もしかしたら、あの鳥たちが私の願いを聞いてくれるかもしれない。」彼女は鳥たちに向かって声をかけた。「私の友達になって!」すると、不思議なことに、一羽の小さな鳥がサッと降りてきた。まるで彼女の言葉を理解したかのように。

その後、エリは毎日鳥たちに餌をあげ、彼らと遊ぶようになった。小さな夢が叶った瞬間だったが、エリはまだ何か物足りなさを感じていた。友達はできたものの、彼女が求めていたのは人間の友達だったのだ。

エリは悩み続け、夜、再びミナに相談した。「私は鳥たちと遊んでいるけれど、本当は人間の友達がほしいの。どうしたらいいの?」

ミナは静かに答えた。「本当に願うものを見つけるのが重要よ。自分の心の声をよく聞いて、どんな選択をするべきか考えて。」

その言葉にエリは考え込んだ。人間の友達を作るにはどうすればいいのだろう?集落の公民館で行われるイベントに参加するという手もあったが、恥ずかしさが先に立ち、思い切れなかった。

春が訪れ、花が咲き乱れ、エリは公民館の前を通り過ぎた。イベントの声が聞こえ、「参加者募集中」との掲示が目に留まった。勇気を出して、彼女は中に入ることにした。

最初は緊張して言葉も出なかったが、しばらくして他の子供たちと自然に話せるようになった。少しずつ、笑顔が増え、彼女自身も楽しんでいることに気がついた。

その帰り道、彼女は人形のもとへ向かった。「ミナ、願いが叶ったよ!私、友達ができた!」

人形は微笑み、こう言った。「あなた自身がその願いを叶えるために動いたからね。友達は自分から手を伸ばさなければ結えないのよ。これからも、自分の心に正直でいて。」

その言葉にエリは深く頷き、心が温かくなった。そして、彼女はこれからも新しい友達を大切にし、成長していくことを決意した。人形のささやきが、彼女の人生の指南となり、小さな願いは、小さな一歩から始まることを教えてくれた。

そして春の終わり、集落に渡り鳥たちが次の旅へと羽ばたいていくのを見送りながら、エリは彼らに手を振った。彼女の心には、あの人形の優しい微笑みと、新たに得た友人たちとの明るい未来が広がっていた。


タイトルとURLをコピーしました