「光の中の舞踏会」
真夜中の舞踏会が開かれるのは、この町の外れにある古い神社の境内だった。神社には、長い年月を経た木々と、いくつかの石造りの社殿が佇んでいる。その神社の鳥居は、みんなが忘れ去った時代を物語るように、苔むした石の表面が静かに主張していた。
舞踏会は深夜0時、と決められていた。町の人々の中には噂が流れ、夜中の神社には神秘的な魅力が漂うと信じている者たちがいた。それを確かめるべく、数人の若者たちが集まったのだ。彼らは、失われた時間を取り戻すかのように期待と好奇心に満ちた目で、神社へと足を運んだ。
「本当にこんなところで舞踏会があると思ってるのか?」一人の男が、半信半疑な様子で言った。
「ほら、あそこに灯りが見えるよ!」別の少女が手を指し示す。その先には、薄暗い境内でひっそりと揺れる明かりがあった。
彼らは鳥居をくぐり、神社の中へと入った。境内に見えるのは、小さな提灯と、どこか異次元から来たような衣装をまとった人々だった。彼らは音楽に合わせて踊っている。その光景はあまりにも幻想的で、まるで夢の中にいるようだった。
夜は深まるにつれ、参加者たちの輪は広がり、活気に満ちていた。しかし、舞踏会の真の目的は明確ではなかった。彼らは無邪気に楽しんでいたが、その影には何か不気味なものが潜んでいた。
時計が0時を回ったその瞬間、舞踏会は一層奇妙な雰囲気に包まれた。どこからともなく聞こえる、低く沈んだ音。人々は踊りを止め、互いに顔を見合わせた。
「おい、外に出よう」と、誰かが言った。
しかし、辺りは奇妙な静寂に包まれていた。誰もが外に出ようとしても、足が動かない。まるで、何かに囚われているかのような感覚だった。人々の間に不安が広がり始める。密室のような状況の中、一人の少年が悪戯っぽく言った。
「ここは実は一つの夢なんじゃないか?出られないなら、逆に楽しんでしまおうぜ!」
彼の言葉に一瞬誰もが笑い、緊張がほぐれた。しかし、その瞬間、舞踏会の雰囲気は一変した。提灯の明かりが一斉に消え、真っ暗な闇に包まれた。恐怖が心を駆け抜け、呼吸が速くなる。
「脱出する方法を考えよう!」一人の少女が叫ぶ。彼女もまた、不安な表情で周囲を見回していた。
その時、ぼんやりと明かりが差し込んできた。彼らが立っていた場所の中央に、まるで別世界への扉のように光り輝く鳥居が出現した。神社の鳥居は、彼らを誘うかのように微かに揺れていた。
「行こう!」だけど、誰もがその鳥居に近づくことに躊躇した。何が待ち受けているのか、確信が持てなかった。仲間たちの中には、恐れと好奇心が入り混じった感情が渦巻いていた。
一人の少年が前に進み、鳥居の真下まで行った。彼の衣装は煌びやかだが、その表情は真剣だった。「試してみよう。もしかしたら、この鳥居が道を開いてくれるかもしれない。」
彼は一歩踏み出した。その瞬間、鳥居から突如として強い光が放たれ、少年はその光の中に吸い込まれるように消えていった。
「やめろ!」少女たちは叫び、手を伸ばすが、少年はもう戻ってこない。混乱が広がり、残された仲間たちは恐れを抱いたまま、その不安な密室の中で呆然と立ち尽くす。
その夜の舞踏会は、ただの楽しい集まりではなかった。誰もが深い秘密を抱え、夜の精霊たちに試されているかのようだった。彼らの中には、もう一歩踏み出す覚悟ができた者もいれば、恐れに引き戻される者もいた。
最後の一人となった少女は、苦しみながらも決心した。光に向かって進む。その瞬間、周囲の時間が止まったように感じた。彼女は神社の鳥居の下に立ち、羽ばたくようにその光の中に飛び込んだ。
彼女が意識を取り戻した時、彼女は舞踏会の音楽が流れる中、静かな夜の神社の中にいた。暗闇から星空が覗いている。目の前には、いつでも戻れるように見える、あの古びた鳥居が立っていた。
どこかで心のどこかに染みついた恐怖を感じながら、彼女はそれを乗り越え、新たな何かを求める旅を始めていた。彼女は微笑んだ。そして、舞踏会の始まりを心待ちにしながら、新たな一歩を踏み出す決意を固めたのだった。