「闇の中の星」

短編小説
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「闇の中の星」

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「闇の中の星」

夜風が静かに吹き抜ける中、明治の町は闇に包まれていた。街灯の下で、人影は影を引きずりながら歩いていた。彼の名は健二。手に一通の古びた手紙を握りしめていた。手紙は、彼の祖父が生前に書いたもので、彼の運命を大きく変えるものとなる予感がしていた。

「もし、これを読んでいるのなら、君は私の息子だ。闇の中の星を見つけるための旅を始めなさい。」

祖父の滑らかな筆跡が彼の目に飛び込んできた。まるで時間を越えて話しかけてくるかのようだった。「闇の中の星」とは一体何を意味するのか。健二は心の中でつぶやきながら、月明かりに照らされた道を進んでいた。

途中、彼は小さな神社の前に立ち寄った。神社の境内には、朽ちかけた石の鳥居があり、その奥に一メートルほどの大きな岩があった。偶然にも、その岩はまるで彼を待っていたかのように、ひんやりとした感触を醸し出していた。彼は手紙を再び読み返し、じっくりとその岩を見つめた。

その瞬間、岩の表面に異様な光が差し込んだ。まるで星の光が彼を呼んでいるかのように、岩が青白く輝き始めた。驚きと恐れが入り混じった健二は、思わず後ずさった。しかし、なぜかその光に引き寄せられるように再び近づいた。

「お前は、光の剣を持つ者か?」と、低く響く声が彼の耳に届いた。振り返ると、見知らぬ老人が立っていた。彼の目は鋭く、どこか神秘的な存在感を持っていた。

「光の剣?何のことですか?」健二は混乱しながら問い返した。

「お前の祖父は、闇の中の星を見つけるために光の剣を手渡したと言った。今、お前がその試練を受ける時だ。」

健二は戸惑いながらも、老人の言葉に心を躍らせた。手紙に書かれていた「旅」が、こうして始まったのだ。彼はついに自分の役割を見出そうとしていた。

「どうすれば、光の剣を手に入れられるのでしょうか?」健二は尋ねた。

老人は静かに頷き、岩の前に立って両手を差し伸べた。すると、岩の表面が震え、ついには剣の形をした光が現れた。白い光に包まれた剣は、まるで星のしずくのように輝き、彼の目を奪った。

「お前が真の勇気を持っているなら、その剣を手に取りなさい。」

心臓が高鳴る。健二はほとんど無意識のうちに光の剣を掴み、その瞬間、力強いエネルギーが彼の体を駆け抜けた。彼は自分の内側から何かが目覚めるのを感じた。視界が一気にクリアになり、彼は闇の中でまるで星のように輝く自分を見つけた。

「これが…光の剣。」彼は呟いた。光の剣を手にしたことで、彼の心は強くなり、過去の恐れや不安が去っていくのを感じた。また、同時に祖父の言葉が彼の心に響いた。

「闇の中の星を見つけるためには、まず自分自身の中の光を見つけることだ。」

その言葉が彼の背中を押し、さらなる探求へと導いた。老人は静かに見守りながら、健二に続けて指示を与えた。

「今から、昔の神話が住む場所へ向かうのだ。そこにはお前の運命が待っている。」

健二は老人の言葉に素直に従い、光の剣を握りしめたまま難易度の高い闇の中へ進んだ。道のりは険しく、心の中に潜む不安が彼を襲ったが、光の剣が灯す明かりは彼を前へ進ませた。

数時間後、彼は古びた神殿にたどり着いた。神殿の石壁には、無数の星座が彫られ、暗闇の中でも鮮やかな光を放っていた。健二はその美しさに目を奪われ、ここが彼が求めていた「闇の中の星」なのではないかと思った。

神殿の中央には、古代の遺物である球体があった。球体は、星々の動きを映し出す精巧な装置で、健二はその美しさに圧倒された。

しかし、彼の心に不安がよぎった。もし、これがただの幻だったら?運命が破滅に向かうのではないかと。そんな彼の心を読み取るかのように、光の剣が暖かく光り輝いた。

「闇の中で星を見るためには、光を信じなければならない。」その声は、祖父のものであったかのように明瞭だった。

健二は光の剣を掲げ、真っ直ぐ球体に向かって突き刺した。すると、瞬時に光が爆発し、神殿が真昼のように明るく照らされた。闇が消え去り、彼の目には無数の星々が映し出された。

「見つけた、闇の中の星。」彼は喜びの声を上げた。それは、自分自身の中の光を見つけた瞬間でもあった。健二の目の前に現れた星々は、彼の未来のビジョンであり、彼が進むべき道を示していた。

光の剣を持つ彼は、一歩ずつ新しい未来へと踏み出した。闇に包まれていた過去は、全て儚い影となったのだ。自分の中の光を信じ、さらに光を求める旅は始まった。健二は一度きりの人生を、自らの手で築き上げていく決意を固めたのだった。


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