「迷路の先に待つ光」

短編小説
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「迷路の先に待つ光」

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「迷路の先に待つ光」

夜の街は静まり返り、月明かりが薄い霧の中でほのかに輝いていた。先日、古びた地図を見つけたばかりの翔太は、未知の場所を探検するために家を飛び出していた。彼の目指す先は、伝説の「巨大迷路」と呼ばれる場所。そこには運命の再会が待っているかもしれないと、心のどこかで感じていた。

翳った街の一角、街灯の明かりが頼りなげに照らす道を進む翔太は、目的地までの道のりがわからず戸惑っていた。そんな時、不意に視界に入ったのは大きな石造りの壁。苔むしたその壁は、まるで時の流れを拒絶するかのように立ちはだかっていた。迷路はここにあるのだろうか。この瞬間、彼の心に不安と期待が交錯する。

その壁に近づくと、ひび割れた入り口が目に飛び込んできた。そこにはふわっとした薄明かりが灯り、翔太は恐れを抱きつつも一歩踏み入れた。入り口をくぐると、即座に周囲の音が消え、視界が狭まった。無数の石壁が並ぶ迷路の中に足を踏み入れ、一歩を進めるたびに、彼の心臓が早鐘のように打ち鳴った。

道は無限に続いているかのようだった。何度も曲がりくねり、彼は方向を失っていた。何かに引き寄せられるかのように歩き続けたが、どこが出口なのか、どこに向かっているのか分からない。迷う中、翔太は一つのことを思い出した。彼がこの迷路を訪れようと思った理由、それはかつて離れ離れになった愛する人、優子との再会であった。

数年前、翔太は優子と特別な思い出をたくさん作った。しかし、彼女の家族の事情で引っ越してしまい、音信不通になってしまったのだ。優子が迷路の中にいるかもしれない。そんな思いが彼の脚を前に進めさせる。

迷路に迷い込み、時間の流れが分からなくなったころ、翔太はついに小さな広場に辿り着いた。そこは街灯の下にポツンと立っている一本の桜の木が、異様なまでに綺麗で、幻想的な雰囲気を醸し出していた。彼の心臓は高鳴り、思わず木の方へと進んだ。その時、何かの気配を感じ、振り返った。

「翔太?」

その声は、あまりにも懐かしいものだった。翔太の視線の先にいたのは優子だった。驚きと喜びが一瞬で彼の心を満たし、彼は声を失った。優子もまた、驚ろきと喜びに満ちた表情でこちらを見つめていた。

「どうしてここに…?」翔太は震えながら尋ねた。

「私もあなたを探していたの。夢で、ずっとあなたとこの迷路を歩いているの。」優子の瞳は月明かりに照らされ、どこか神秘的に光っていた。

二人は自然と抱きしめ合った。時が止まったかのように、運命が交差した瞬間だった。再会の喜びが、長い間の空白を埋めるように心を満たしていく。翔太はもう一度、優子を失うことはないと心に誓った。

優子は翔太に手を引かれ、迷路の中を進み始めた。道はまだまだ長く、出口が見えるわけではなかったが、二人にはその不安さえも嬉しい冒険に感じられた。これまで失った時間を取り戻すべく、彼らは笑い声を交わしながら、迷路の中を共に歩いていった。

何度も曲がりくねる道を進むうちに、彼らは次第にお互いの心の中に深く染み込むことが感じられた。尖った石壁や急な角を越えながら、彼らはさまざまな思い出話をし、再度結びつくことの喜びを噛み締めていた。

そして、ついに迷路の出口が見えた。暗闇に包まれた先に浮かぶ光は、彼らを新しい世界へと導いた。迷路の先に広がる光景は美しく、二人はその先にあたたかな未来を感じた。

「さあ、一緒に未来へ行こう。」翔太は優子に手を差し出した。優子は微笑み、彼の手を取った。

二人の運命は再び交わり、新しい冒険が始まろうとしていた。桜の木が一瞬風に揺れた瞬間、彼らの心は強く、確かなもので満たされていた。巨大迷路を抜けた先に、彼らが歩んでいく未来が待っている。


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